八重山郷里の挑戦Vol.14 最終回「八重山郷里牛」の規約策定
八重山郷里素牛生産者グループは「八重山郷里牛」初輸出後の10月14日、
今後の活動方針等について会合を開き、八重山郷里牛の規約策定を決めた。
これまではより多くの繁殖農家の活動参加を掲げ “八重山生まれ”の訴求、
八重山の繁殖事業の底上げを念頭に取り組んできたが、
今後、「八重山郷里牛」を付加価値の高いブランドとして国内外に発信するために、明確な定義付けが必要と判断した。
新たな規約には
①父の血統を但馬系に限定
②出荷月齢32カ月以上(海外は輸出先の月齢制限に準ずる)-を盛り込み、美味しさの遺伝子にこだわった日本初の子牛農家によるブランド牛の確立をめざす。
子牛の履歴管理の重要性についても認識を共有し、グループとして記録保管を徹底、八重山郷里牛の出荷の際には子牛生産履歴カルテを添付できるよう整備を進める。
与那国島の金城信利さんは「農畜産物の履歴記帳は全国的に広がる取り組みで、肥育だけなく繁殖でも当たり前の時代になる」と指摘する。
東竹西信行リーダーは「八重山から巣立った子牛が八重山郷里牛として海外へ渡り、食されることを誇りに思う。
日本のみならず世界の方々にどのような評価を頂けるのか楽しみ」と期待を膨らませる。
さらに「本当に美味しいと納得できる素牛づくりがしたい」と仲間に訴えた。
■ 美味しい牛肉づくりは素牛にあり
筆者は、農産物の付加価値化とは“伝える力”だと考える。膨大な商品、情報が溢れる消費飽和の時代に、作り手の熱意や体験、そして商品としての魅力をいかに伝えるのか。曖昧さやごまかしのある筋書きでは人の心を動かすことはできない。
作り手のコンセプトを磨き込み、伝えることに真摯になった時、「伝えきれない理由」「足りない何か」が見えてくる。2000年以降、国内肉牛生産は肥育の規模拡大が急速に進んだ半面、繁殖の増頭が追いつかず素牛供給に大きなズレが生じた。
繁殖事業には高い生産技術、管理レベルが要求される。和牛の輸出量が倍増で推移する状況下、素牛不足が恒常化する可能性は高く、いかに繁殖基盤を確保するかが肉牛事業の最重要課題だ。
八重山郷里グループでは、つねに「食べる人」を意識した活動に取り組んできた。繁殖農家は肥育農家に子牛を託す立場だが、牛肉の生産流通の一翼を担う部門としての誇りをもち、伝える努力を続け、八重山ひいては日本の畜産業の未来を切り拓いてほしい。
慣習に捉われず、生産・流通・消費の各段階で真の価値を共有し、再生産可能な仕組みを創り上げることが大切だ。(MeatUP!・片平梨絵)
*今号で八重山郷里の挑戦の連載を終了します。
Meat UP!片平梨絵
この原稿は肉牛ジャーナル2013年10より連載されていたものです。
2015年9月より新連載「新・八重山郷里の挑戦」へつづく>>
タグ:八重山郷里牛, 子牛農家によるブランド牛